ワカチナ。
ワカチナというオアシス。
砂漠の中の小さいオアシス。
ホテルから少し歩くと、沼みたいなのが見えた。
ああ、ほんとだ。オアシスなんだ。
周りは砂の山々。
上までどれくらいで登れるんだろう。
そこにいたおばちゃんに聞いてみると、人によるけど30分以上かかるわねって。でもそのサンダルじゃ無理よ。
大丈夫、さっきビーサンに履き替えたから、靴も持ってる。
登るぞ。
半分くらいまでは、休み休みしながら順調。
足を砂に埋もらせながら登り、止まるとまた 上からの砂で埋もれていく。
上の方に来ると、なかなか上に登っていけない。
砂が上からサラサラサラ。
ここらへんまででいいかなあ…… でもまだ行ける。
っていうのを何回か繰り返して、
突如、砂が途切れた。てっぺんだ! こんなふうにとんがっているのか。
とんがりをまたいで座った。サラサラの砂が流れる。
砂山の向こう側も砂、砂、砂。
風に砂が混じって、とんがりを越えていく。
なぜか泣く。
地球って、すごく大きい。
遠くの方では サンドバギーのエンジン音と歓声。
そう、私は、誰かに良いところに連れて行ってもらうんじゃなくて、自分で見つけたいんだ。
誰かに喜ばせてもらうんじゃなくて、自分で楽しみたいんだ。
どうなるかわからない方向に歩いてみて、うわーって味わいたいんだ。
ああ、日本に帰ろうって思った。
帰国の日は決まっているから帰るんだけど、でも、そう思った。
この砂山は、風紋と同じようにできてるんだな。
私にとっては大きいけど、地球からしたら風が作った砂の模様とそう変わらない。
全てを飲み込みそうな砂漠の砂。
反対側のくぼみに落ちたら、生きて戻るのが大変そう。
砂漠に落ちる夕陽を見よう。
もう少しここで待とう。
周りには誰もいない。でもオアシスが見える。
おいしい空気とおいしい水と、あとは生きる力。
それがあれば。
生きていくよってつぶやきながら、また泣いた。そしたら笑えてきた。